皮膚科

アトピー性皮膚炎を始めとする湿疹群

急性期の治療はステロイド外用剤になることが多いです。部位によってステロイドのランクを変えて塗布してもらいます。アトピー性皮膚炎ではステロイド外用剤の他、タクロリムス製剤(プロトピック)や漢方薬の併用をお勧めすることもあります。


手湿疹

原因は?

内的要因としてアトピー性皮膚炎、汗疱(異汗性湿疹)があります。汗疱の原因は不明です、指や手のひらに小さな水疱が出来て、その後に薄皮がむけてきます。人によっては水疱がはっきりしない方もおられます。水疱が出来ている時には痒みを感じることが多いです。時に食物や歯科金属に含まれる金属による全身型金属アレルギーが関係する場合があります。

外的な要因として石鹸、界面活性剤、有機溶剤、摩擦などの要因が挙げられます。
手湿疹の原因の7割を占めると言われています。長時間、水や界面活性剤などに接していると、水溶性の保湿因子や表皮脂質が流出して手の皮膚の細胞が剥がれやすくなると共に柔軟性が無くなってしまい、ガサガサしてきます。その後に炎症を生じさせて、さらにセラミドも減少し、悪循環をきたします。

アレルギー性の要因としてニッケル、クロム、ゴムが有名です。
手荒れがあると、種々のアレルギー原因物質が皮膚に吸収されやすくなり、アレルギーが成立する機会が増えてしまいます。

ニッケルはアクセサリー、硬貨、鍵、台所用品などに、クロムはセメント、皮革製品などに含まれています。
天然ゴムに加えられるチウラム系化学物質もゴム製品によるアレルギー原因物質です。ラテックス手袋によるアレルギーではほとんどの場合が接触した後に蕁麻疹を生じます。

経口摂取アレルゲンとして薬剤、ニッケル、クロム、香料などがあります。
薬剤、香料、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、亜鉛などの金属などが、食物や歯科金属から口を介して摂取されて手湿疹がひどくなることが知られています。汗として濃縮されて排出されるので、手のひらや足の裏など発汗が多い場所に影響を与えるものと考えられています。

 

治療は?

ステロイド外用剤で炎症を抑えるのと同時に、日頃のスキンケアと、仕事や生活でアレルギーの要因がないかどうかを考えま。ハンドクリームと日常生活を注意するだけで改善すればよいのですが、繰り返す場合や難治の場合にはパッチテストなどによって原因検索を試みることもあります。

じんま疹

原因は?

白血球の一種である血中の細胞が刺激されることで、周囲にヒスタミンなどの化学物質がばらまかれます。これらのヒスタミンにより血管が拡張するので皮膚に赤みがでたり膨れまたりします(膨疹:みみず腫れ)。
よく患者さんから「原因は?」と聞かれますが、原因の特定が難しいのがこの蕁麻疹です。血液検査をすることもありますが、ご自分で思い当たる要因がない方には積極的には勧めません。原因はアレルギーだけではありません。増悪因子、つまり振動や圧迫などの機械的刺激、温熱や寒冷などの温度変化、日光、刺激物、解熱剤、痛み止めなどを出来るだけ避けることも大切です。

治療は?

基本は症状(赤み、膨隆、痒みなど)を抑え、症状が出ないよう抗ヒスタミン薬の内服でコントロールすることになります。対症療法ではありますが非常に重要です。

まずは自分に最適なクスリを探すことからはじめます。一番合っているクスリとは、赤み、盛り上がり、痒みが全く生じず、副作用としての眠気も出ないクスリです。最低でも2~3日は内服してみないとそのクスリの効果は判定できません。

小児のじんま疹は風邪などの感染を契機に短期的に内服が終了出来ることが多いですが、成人の場合には1ヶ月以上持続する慢性じんま疹になることが多いです。慢性じんま疹では約50%が内服治療にて1年後には軽快するといわれていますが、1年以上の内服を必要とする方もそれなりにいらっしゃるということです。

じんま疹治療で問題なのでは「じんま疹がおさまったから薬は中止!」と自己判断で内服薬をやめてしまうことです。全く症状が出ないようになれば、内服する間隔をあけてゆき、出ないのを確認しながら中止していくのが治る近道になります。間隔をあけて症状が出現する時には、その前段階の内服間隔に戻します。じんま疹が出ないように最低限のクスリでコントロールするようにします。

にきび

にきびの原因としては以下のものがあります。

1.皮脂(皮膚の油分)の分泌亢進
2.ニキビ菌の増加 

3. 男性ホルモン

4.毛穴の角化

思春期にニキビが出てくるのは第二次性徴期を迎え、体の中で男性ホルモンが増えてくるのためです。また、思春期を終わった後に生じてくるニキビは女性ホルモンと男性ホルモンのバランスの崩れが一因とされています。

男性ホルモンは毛穴を角化させ毛穴を塞ぎ、また、皮脂の分泌を促進させます。そのため、毛穴の中に皮脂が詰まった状態(面ぽう(コメド)、白ニキビ、黒ニキビ)が作られます。

その面ぽうの中で、皮脂を栄養分とするニキビ菌が増加し赤いニキビや膿を持ったニキビが出来てます。

赤にきびを放置していると瘢痕(なおったあとのへこみ)や次項の炎症後色素沈着などを引き起こし、長期に悩まされます。「にきび」にはクレア〇〇〇やプロア〇〇〇でなく、まずは皮膚科医へ!!の時代です。

治療のポイントはできるだけ早期に炎症を収めることと、白ニキビといった赤ニキビ予備軍を減らしていく維持療法を継続的に行っていくことです。
重症度アダパレン(ディフェリンゲル)、抗生物質内服・外用、過酸化ベンゾイル(ベピオゲル、デュアック配合ゲル)による治療を行い、治りが悪いようであれば他の治療を行なっていきます。

他の治療の中には保険の使える漢方薬もありますし、自費診療ではありますが、低用量ピルなどがあります。

炎症後色素沈着

にきびの患者さんで「先生、全然治りません。どうにかして下さい。」といってこられる患者さんの多くがこの炎症後色素沈着です。

 

治療は表皮性の場合と、真皮性(より深い)を伴うものによって異なってきます。
表皮性のものは、原疾患、原因がとり除かれれば、上の図のように数か月以内で元に戻っていきます。しかし、衣服に覆われた部分では日光暴露などの刺激に晒される機会が少ないために、修復の対応が鈍く、半年以上も色素沈着が遷延することもあるとのことです。しかし1年以上も続いたり、灰褐色調があれば真皮性のものを考える必要性があり、レーザーによる治療も検討されます。


 いずれの場合もまず遮光に心がけ、摩擦を避けることが重要です。その上で、美白治療を行います。ハイドロキノンなどが有効ですが、そのかぶれや色素増強などの副作用に注意を要します。連続使用は6か月以内に留めるべきだとされています。

円形脱毛症

原因は?
円形脱毛症は、成長期の毛に発現する自己を攻撃してしまうリンパ球が産生されてしまい、成長期の毛が障害されて生じると考えられています。全身症状は伴いませんが、自己免疫疾患(リウマチや全身性エリトマトーデスなど)の一種となります。

症状は?
病変部は境界鮮明で、単発または多発、脱毛斑は類円形です。活動期の脱毛巣の周辺では特有の“感嘆符毛”(毛幹部は太いが毛根部は萎縮して細り、「!(感嘆符)」に似ている)を認めます。

治療は?

重症度によって以下の治療を組み合わせて行います。

・ 塩化カルプロニウム液(フロジン液)
・ ミノキシジル製剤
・ ステロイド外用
・ ステロイド内服
・ ステロイド局所注射
・ 免疫抑制剤内服・外用
・ 局所免疫療法(当院では行っておりません)
・ PUVA療法(当院では行っておりません)
・ グリチロンやセファランチン内服

このまま全部抜けてしまわないか心配になります。
アトピー素因があったり、思春期以前の発症では難治なことがあります。また87%に再発したという報告がありますので、命にかかわる問題ではないのですが、とても精神的にダメージの大きい病気といえます。

注意できることってある?
・ タバコを控える(ニコチンが末梢血管を収縮させ、局所の血流を低下)
・ 日常のストレスを避け、睡眠を充分にとる
・ 毛髪や頭皮を清潔に保つ(毛穴の皮脂などのつまりを除去)
・ 頭皮を指腹でマッサージし、血液循環をよくする
・ 髪を結う際には負担がかからないようにする(引っ張りすぎない)
・ バランスのとれた食事

多汗症・わきが

原因は?

人間の皮膚にはエクリン汗腺、アポクリン汗腺と呼ばれる2種類の汗の管があります。エクリン汗腺は全身の皮膚の浅いところに広く分布し、皮膚表面に汗を直接分泌しています。
その汗の中身はほとんどが水分で少量の塩分を含んでいます。運動や病気などで体温が上がった時にでる汗がこのエクリン汗で、水分が蒸発するときに熱を奪いますので体温調節の役割があります。このエクリン汗は精神的に緊張した時に発汗が特に多く起こるのが特徴です。
エクリン汗自体にはあまり臭いがありませんが、通常よりも量が多い場合に腋窩多汗症と呼ばれます。精神的にリラックスしている時はそれほどではありませんが、学校の試験や仕事中、人前で話すなど緊張した時に汗が噴き出るようにかきますので、衣類に汗にじみができたりして悩みの原因になります

もうひとつの汗の管が腋臭症(ワキガ)の原因となるアポクリン汗腺です。このアポクリン汗腺は思春期ころになると、わきの下や外陰部・へその周囲の毛穴から成長し大きくなって活動が盛んになってきます。
このアポクリンの汗の中には脂肪分や蛋白質が多く含まれています。そのためアポクリン汗が皮膚に分泌されますと、皮膚の表面や毛についている細菌によって分解されワキガ独特の臭いを発生します。

ワキガの診断は腋の臭いをかいでみるしかありません。ご自分で臭いがすごく気になっている方であっても診察時には臭いの確認ができないことがあります。


この腋臭症の体質について、統計学的には欧米人では約8割、日本人では約1割とされています。遺伝形式は常染色体優性遺伝といいまして、片方の親にその体質がありますと約半分のお子さんに、両親にその体質がありますと約8割のお子さんに遺伝するといわれています。

治療は?


★多汗症のみで腋臭症がない方

塩化アルミニウム(当院で購入できます)や制汗剤などの外用薬を使うことによって、多汗を多少抑えることができますが、効果は限定的で長続きはしませんので、1日に何回も使用しなければなりません。


全身の発汗を抑える内服薬もありますが、唾液、涙も同時に減少してしまいますので、使用しにくいこともあります。


多汗に対するボトックス注射療法という選択もあります。ボトックスという薬は神経の働きを一時的に鈍らせる作用があり、交感神経が汗腺を刺激し発汗させるところをブロックするわけです。作用は半年以上経過すると徐々に弱まってきますので、定期的に繰り返しボトックス注射をする必要があるのが欠点ですが、手軽に行うことが出来るのがメリットです。しかし、ボトックスによる制汗作用は個人差がありますので、注射を行ってもあまり効果が出ないこともあります。長い期間ボトックス注射を繰り返し行っていると薬効成分に対する抗体が体の中に出来てしまい、効果がでにくくなっていくこともあります。

★腋臭症で症状の軽い方

腋毛の脱毛(毛を剃る、レーザー脱毛など)を行い、清拭をこまめにすることで腋下を清潔にして、さらに塩化アルミニウムや制汗剤などの外用を使うことによってある程度臭いを抑えることができます。
レーザー脱毛は直接汗腺を焼くわけではありませんので、腋臭症に対する効果は不確実ですので、あくまで補助的な方法です。


★腋臭症で症状の強い方。

腋毛についているアポクリン汗腺を取り除くための手術療法をお勧めします。病院の形成外科をご紹介します。

巻き爪

原因は?

爪が欠けている状態が続くいたり、歩行や重力(体重)に伴う一定の下からの反力がないと、爪は自然に巻いてしまいます。そのため、長期臥床や足趾の変形などに伴って、適切な反力がないために巻き爪が見られることが少なくありません。

治療は?

以下の治療から患者さんの爪の厚さ、大きさ、弯曲の程度をみて選択します。

1) テーピング
2) ネイルアイロン
3) 巻き爪クリップ
 形状合金プレートにフックを付けて、自宅で爪に装着できるようにしたものです。軽度の巻き爪の方、爪が比較的薄い方では効果があります。使い捨てではありませんので、ご自宅で保管いただければ再発時には繰り返し使用可能です。
このクリップを使用する際に、深爪していたり、爪端を丸くしていると装着できません。従って、巻き爪傾向のある方は、深爪はせずに爪の両端を伸ばした四角い爪(スクエアカット)、端だけ少し角を落とす程度にヤスリで丸めるにとどめる習慣をつけることが重要です。

陥入爪

原因は?

陥入爪は、深爪をして爪甲の角を丸く斜めに短く切ることによって爪棘ができて、食い込んで発症するのが大半です。爪には指先を保護する機能の他に、指の細やかな作業をしたり、足趾で地面に踏ん張ったりする、支えとしての意味があり、指腹部にかかる圧力とバランスを取るため、自然にある程度の弯曲があり、両端が巻き込むような性質があります。

従って、巻き爪傾向のある方は、深爪はせずに爪の両端を伸ばした四角い形の爪(スクエアカット)を心がけ、端だけ少し角を落とす程度にヤスリで丸めるにとどめましょう。
 このバランスが崩れてしまい、爪横の皮膚(側爪郭)に爪が食い込み爪郭炎を起こした状態が巻き爪であり、足の第1足趾に好発します。さらに、深爪をしすぎると、爪の角が食い込んで痛みを生じたり、さらに慢性化すると肉芽形成・出血・排膿などを生じてきます。

治療は?

1) アンカーテーピング法

側爪郭の皮膚に粘着テープを爪端に平行に貼って、もう一枚のテープで近位方向にらせん状に引っ張ることで、皮膚にかかる圧迫を減らそうという方法です。
 側爪郭が長い間押されて、皮膚自体が盛り上がる例に効果があります。軽症例や予防的な使い方の際には、基本テーピング法でも対処可能です。ネイルアイロン、コットンパッキング、ガター法など様々な矯正治療と組み合わせて用いられる最も基本的な治療方法です。

2) ネイルアイロン・コットンパッキング
 柔らかくした爪を熱した専用の鉗子で持ち上げることで巻き込んだ爪を挙上します。ワイヤー矯正治療ほどの効果はありませんが、痛みの軽減には一定の効果がありますし、コットンパッキング(綿を挿入して爪と皮膚の直接の接触を妨げる方法)は行いやすくなります。
 
3) ガター法
 爪縁部が食い込み肉芽形成が見られるケースで適応となります。
 チューブに切れ目を入れて、側爪郭に食い込んでいる爪端を保護します。痛みが強い場合は、麻酔を行ってからの処置となります。その後、チューブを医療用アロンアルファやアクリル樹脂で固定します。通常、違和感が数日ありますが痛みは徐々に改善します。炎症性の肉芽には、ステロイド外用薬や液体窒素凍結療法、薬品塗布などを行うこともあります。肉芽が顕著で爪甲側縁が深く埋没している症例が適しているでしょう。
 チューブがはずれた場合は早めに再来ください。そうでなければ当初は1~2週間に1回の通院で構いません。


4)陥入爪根治術・フェノール法
 様々な保存治療に反応しない難治性の炎症を伴う巻き爪は手術療法の適応となります。当院では行いませんので総合病院へ紹介します。

ケロイド

原因は?

赤く硬く隆起しており、時にかゆみや痛みを伴います。ケロイドは軽微な外傷や手術創・予防接種・にきび・水ぼうそう・帯状疱疹・ピアスなど軽いキズ痕から生じて周囲の健常皮膚へ赤みや隆起が広がってゆきます。有色人種は白人種よりもケロイドが生じやすく、性差なく、若年者に多く、好発部位としては前胸、肩、上腕外側、耳垂、下顎部などです。

治療は?

以下の治療を組み合わせて行います。

1)圧迫療法
 副作用がないため、予防・治療の両面において汎用されており、3~6カ月間、1日12時間以上圧迫するのが理想的で、スポンジやサポーター、弾性包帯などを工夫して使用します。

2)ステロイド局所注射
 ステロイド局所注射薬を局所麻酔薬で希釈した溶液を患部に直接ゆっくりと注入する方法です。新鮮病巣ほど効果的で、一般的には2~3回で効果が見られます。2~4週間の間隔をあけて繰り返します。先ずは痒みなどの自覚症状が軽減し、その後少しずつ平坦化してきます。副作用として皮膚・皮下組織の萎縮があり、治療回数が多くなるに従って少なからず毛細血管拡張症(血管が浮き出る)を認めるようになります。痛みのために注射を行えないようでしたら、効果は劣りますがステロイドの外用剤やテープ剤を使用します。

3)トラニラスト内服(リザベン)

1日3回内服するクスリ(抗アレルギー剤)です。膀胱炎様症状や肝機能障害に注意して使用します。

大きいケロイド、効果が乏しいものは外科的治療・放射線治療が検討されますので総合病院へご紹介します。

粉瘤(表皮嚢腫)

原因は?

良性の皮膚腫瘍の仲間です。表皮の一部が真皮内に陥入して増殖して内部に角質物質を貯めるようになるといわれています。有毛部のどこにでも出来て、多くは開口部があります。角質が自然排出され小さくなることはあります。開口部がみられない場合には、場所や硬度で他の皮下腫瘤と鑑別が必要な場合があります。

治療は?

感染をおこしている場合は局所麻酔をして、膿を外に出すような切開処置をします。抗生物質の内服や鎮痛剤も処方します。

感染を起こしていなければ基本的に放置でよいのですが、大きさがそれなりにあったり、美容的に問題になる場合は粉瘤の袋ごと摘出します。(切開だけでは粉瘤の袋がのこってしまうので再発します)。

炎症がおこって切開した後の粉瘤の摘出はある程度の時期をおいてから(6週間以上)施行します。炎症の影響で早期では完全摘出が難しいからです。

水虫(足白癬、体部白癬、爪白癬)

原因は?
 土壌内真菌で、Trichophyton ruburum、 T. mentagophytes、 Epidermophyton floccosumの3種類で90%を占めます。いわゆる「垢(あか)」と共に真菌が脱落するので、スリッパ、脱衣マット、靴下、靴、爪きりなどが媒体となります。

診断には角質の一部を擦って、顕微鏡で真菌を確認する昔ながら行われている方式が手っ取り早くさらに確実です。

ただ市販の水虫薬を受診前に使用していたり、病変部位があまりにも浸軟(ふやけている状態)している場合には、実際には水虫がいても陰性になることがあります。

その場合には日を改めて再検査をすることもあります。

治療は?

一般的には足白癬や体に出来る白癬(体部白癬、股部白癬)には抗真菌薬の外用を1日1回することで改善します。ときどきかぶれる方がいますので、定期的に受診が必要です。また足白癬の場合で湿疹病変を合併している方も多くいます。その場合は抗真菌剤の外用で高率ににかぶれますので、まずは湿疹の治療を優先します。

 

爪白癬や頭部白癬には外用剤が効果が乏しいので内服治療が基本になります。

ただ表層型の爪白癬にはクレナフィンという爪への浸透性がよい抗真菌薬の外用が発売されたので、試してみてもよさそうな患者さんにはご紹介します。

内服薬は下の2種類になります。

・イトラコナゾール(イトリゾール)
4カプセルずつ1日2回を1週間内服した後、3週間休薬するという投与法(パルス療法)を3回繰り返します。薬剤が角質に高濃度で移行して貯留することに加えて、副作用と薬剤費の軽減に貢献します。

・テルビナフィン(ラミシール)
1日1錠をを6ヶ月毎日内服します。飲み合わせが禁忌となっている薬剤が少ないのが利点です。


いずれの治療も効果は80%以上あります。ただ、いずれも薬剤も肝機能障害が血球減少などのすぐに症状のでない副作用があるため、定期的に血液検査を行う必要があります。

帯状疱疹

小児期に罹患した水痘ウイルス(水ぼうそうウイルス)が神経細胞に潜伏していて、成人になって抵抗力がおちた時に勢いづいて、体の片側に紅斑、水疱、痛み(かゆみという方も)として出てくる病気です。

必ず成人発症かというとそうでもなく、幼児期に発症する例も時々あります。

抗ウイルス薬の内服で大きな副作用なく治癒することが多いですが、重症の方は帯状疱疹後疼痛が残る場合があります。帯状疱疹後疼痛に対する治療も数々出ていますが、ブロック注射をしたり、内服を続けたりと何年も治療期間を要する場合もあります。ですからまずは予防が大切です。

欧米では定期接種になっている帯状疱疹ワクチンですが、日本ではまだ承認されていません。当院では65歳の肺炎球菌ワクチンと一緒に帯状疱疹ワクチンも勧めていますので、是非受けて頂きたいと思っています。

マルホのホームページが詳しいのでご参照下さい。

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単純ヘルペス

単純ヘルペスウイルスが原因ウイルスで、口周囲に出ることが多いので「口唇ヘルペス」という呼ばれ方もします。風邪や疲れやストレスがたまって体が弱ったりするたびに、くちびるの周りに水ぶくれができます。

外陰部に出来るヘルペスも同じく単純ヘルペスで、「性器ヘルペス」と呼びます。

口唇ヘルペスにしろ性器ヘルペスにしろ初感染は症状が重く出ることが多いです。

治療の基本は抗ウイルス薬ですが、ウイルスを駆逐する治療ではないので、再発もあります。

性器ヘルペスで再発を繰り返す方には、連日の抗ウイルス薬の内服で再発予防を図ることもあります。

下記のホームページが詳しいのでご参照下さい。

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手足いぼ(尋常性疣贅)

原因は?

HPV(ヒトパピローマウイルス)による感染で生じます。小児の手足によくみられます。特に治りにくいのが足底疣贅で、角質が厚くなるため胼胝(タコ)や鶏眼(ウオノメ)に似ていますが、表面の角質を削ると点状出血がみられることが鑑別の目安になります。当院では主に液体窒素での治療をしていきますが、治療が終了したように見えても、残存していたり他の部位に感染して残っていたりすることもありますので、経過観察を要します。

治療は?
・液体窒素凍結療法:液体窒素を含ませた綿球をあてがって凍結と融解を数回繰り返す方法で、最も一般的な治療法です。1~2週間に1回程度の頻度で繰り返します。


・ヨクイニンエキス内服療法:自己免疫力を高める目的で併用されます。

・サリチル酸外用療法:サリチル酸ワセリンを外用しテープを利用してODT(密封療法)をしたり、スピール膏を利用して角質をふやかします。手足のいぼで角質が厚くなっている方に液体窒素治療を併用します。日々ご自身で行なって頂く処置です。


・モノクロロ酢酸:強い腐食作用を示す薬剤です。足底の角質が厚いイボに患部を削って薄くした後に塗布していきます。

当院では液体窒素凍結療法もしくはモノクロロ酢酸+液体窒素療法が基本にはなります。1~2週間間隔で治療をしていきます。1ヶ月空いてしまうと、ウイルスの勢いにまけてもとの大きさにイボが戻ってしまうことが多いため、この間隔での受診をお勧めします。

稀に処置後に水ぶくれになる場合があり、その場合は次の治療まで2週間以上の期間をあけて頂きます。

とびひ(伝染性膿痂疹)

細菌(黄色ブドウ球菌やレンサ球菌)が皮膚で増殖して、毒素を出すために水ぶくれが出来たり、はじけてびらんが出来たりする病気です。

かきむしることで病変があちこちにとぶため、とびひと呼ばれます。

アトピー性皮膚炎など乾燥肌で皮膚バリア機能が低下したお子さんで、夏に発症することが多いですが、最近は冷暖房も完備されているので夏に限らず発症します。

塗り薬だけでは効果が乏しいため、抗生剤の内服治療が必要となります。

下記のホームページが詳しいのでご参照下さい。

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水いぼ(伝染性軟属腫)

原因は?

特に幼稚園児から小学校低学年によくみられるウイルスによる感染症です。水いぼが出来るとモルスクム反応(水いぼ周囲の湿疹化)がみられるのでかゆくなりますし、それを引っ掻いてしまうので体のアチコチに広がったりします。アトピー性皮膚炎のような乾燥肌を持った患児によくみられます。

水いぼは自然に治ってゆくものですが、弱いウイルスなので免疫反応も起きにくく(そのため,症状も軽いのですが)、治るのに時間がかかります。何もせずに様子をみていれば、1個1々はは2ケ月程でなくなりますが、引っ掻いてしまって自家接種により連続して他の部位に広がってゆくので、完全に無くなってしまうには約6ケ月から3年(平均6~7ケ月)かかります。

治療は?

・ピンセットによる圧出:約1時間前にペンレステープなど局所麻酔のテープを小さく切って貼った後にピンセットで摘み取る。
長所:直ぐに治る。欠点:痛みと恐怖。白衣を来たお医者さんがピンセットを持っていると、それだけで怖いみたいです。

・液体窒素凍結療法:綿棒などを液体窒素に浸して患部に押し当て壊死させる。

長所:ピンセット処置よりは痛くない。欠点:痛み、痴皮形成など。


・ヨクイニンを内服:免疫反応を増強して自然脱落を早めるといわれます
長所:痛みがない。欠点:毎日クスリを服用しなければならない。


・自然に治るのを待つ:時間はさまざまですが、待てばほとんどの場合消えます。乾燥肌のお子さんが多いので保湿と湿疹となっている部分の外用治療は「水いぼをこれ以上増やさない」意味でも大切ですので、日ごろのスキンケアはとても重要です。